映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明」はジェット・リーのワイヤーアクションを観る為だけの映画!
ツイ・ハーク監督による香港製ワイヤーアクション・カンフー映画。ジェット・リーのアクションを堪能する、ただその為だけに存在する映画です。
5/10点★★★★★
【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地黎明 黄飛鴻 1991年 香港】
スタッフ・キャスト
監督 ツイ・ハーク
イーサンメイ ロザムンド・クァン
フー ユン・ピョウ
ソウ ジャッキー・チュン
あらすじ
19世紀、清朝末期の中国。民兵を率いて街の治安維持に努めるウォン・フェイホンは、高名な武術家であり漢方医。アメリカ生まれの弟子ソーや洋行帰りのイー叔母から、西洋文化を教えられるものの、欧米列強国と不平等条約を結んだ中国の未来に不安を覚えている。そんななか、街ではヤクザの沙河一味が無法の限りを尽くし、ついにはウォンを亡き者にしようと企むが……。
幾度となく映画の元ネタにされる(同一人物で映画化された回数はギネス記録だそうな)武道家、黄 飛鴻(ウォン・フェイフォン)を主役にしたカンフー・アクション。大ヒットによりジェット・リーの名を世界に示し、シリーズ化もされた香港カンフーの代表作ですね。
【ここが良かった!】
当然ですが見所はジェット・リーの功夫です。「少林寺」と本作の頃は年齢、肉体的にも良い時期だったのでしょう、とてもキレのあるアクションを披露していました。
ワイヤーアクションはアクションに慣れてない役者がやると明らかにワイヤーに振られて飛ばされてるような失笑モノになる事が多いですが、リーは流石に体幹もしっかりとしているのか、この手のアクションの奇想天外な動きも魅力的に見せていました。
中でも雨の中で道場破りと戦うシーンが印象に残っています。早い動きとスローモーションを組み合わせたアクションですが、スローの水飛沫の中、鋭い眼光で型を構えるカットはカッコよかったですね。
ただワイヤーはたまに見えちゃいます…
そんな中、ちょっと気になってしまったのは映画全体の演出と雰囲気です。
ストーリーはまぁアクション映画なので特に重要では無いかと思いますが、それでも本作は祖国に欧米諸国の進出があり、社会の変化に揺れる主人公という設定に敵も地元ヤクザに米英軍と少し凝った脚本です。
しかしそんな社会情勢の不安定さを表したいならしっかりと緊張感を持たせた演出にすべきでした。
主人公のウォンには弟子がいるのですが、中でも太っちょの男と出っ歯の片言アメリカ人辺りがちょいちょい寒いコントやしょうもないドジを入れてくるんですね。何でもない所でたまになら許せるんですが、それを一般人が襲われて怪我人が大量にいる時や戦闘中とかシリアスなシーンでやるもんだから正直シラけるんです。
敵であるヤクザも大分悪どい事やってるんですよ。放火するし、女性をアメリカに売ろうとするし。でもノリがコメディ映画みたいなのでイマイチ恐ろしさがないんですよ。
他にも大量に人が撃ち殺されるなど、結構真面目な事件が起こる割に雰囲気が軽いんです。そのくせ主人公ウォンだけは終始キリッとしてるので非常にバランスが悪い。
そのウォンも牢屋に捕まった時、看守達が好意で逃がそうとすると「いや、私は法に従う」って拒否したくせに自分の好きな女がヤクザに捕らえられたと知るとノータイムで出て行く手のひら返しを披露したしね。しかも実際女性を助けたのはフーなのでウォンは間に合って無いっていう…
シリアスならシリアスに、コメディならコメディに徹すべきだったのではと思います。香港アクションでは前者なら「少林寺三十六房」、後者ならジャッキー映画の方がその辺ハッキリしていましたね。
ただワイヤーアクションは間違いなく高いレベルなので、カッコいい主人公が功夫で悪者をやっつけるのを観たい中学生男子の気分になった時は是非鑑賞してみましょう。
そう、男にはそんな気分になっちゃう時がたまにあるのです。